本覚寺

「鎌倉えびす」で賑わう寺

 本覚寺は鎌倉駅にも近く、「東身延」・「日朝様」として知られ、日蓮宗では重要なお寺であるとともに、鎌倉市民には「えびす堂」のエビス様が商売繁盛の神様として信仰され、毎年の1月10日の「鎌倉えびす」または「十日えびす」といわれる縁日にはたくさんの人が集まり、「笹持ってこい」という声が飛び交う賑やかさです。10月第一日曜日には人形供養も行われています。

本覚寺のデータ

  • 宗派 日蓮宗
    もと身延山久遠寺の末寺
  • 山号 妙厳山  
  • 本尊 三宝祖師像
  • 開山 一乗日出 
  • 創建 永享8(1436)年

東身延 本覚寺

2023/4/10

  日蓮は、佐渡配流から許されて鎌倉にもどったとき、一時この滑川の淵にあった「夷堂」に留まり、その後に甲斐国の身延山に移りました。その「夷堂」があったこの地に、日蓮の弟子の日出にっしゅつが一寺を創建、それが本覚寺となりました。
 第二世の日朝が、身延山から日蓮の遺骨を分納してもらい、分骨堂を建てたので、本覚寺は「東身延」ともいわれるようになりました。江戸時代には日蓮信仰が江戸で高まりましたが、江戸の信者が身延山まで参詣に行く代わりに、この鎌倉の「東身延」にお参りに来るようになり、賑わうようになりました。

 山門と夷堂

 山門は立派な楼門形式で、左右に仁王が睨みをきかしています。この仁王様はしばらくの間、京都で化粧直し(修理)のためお出ましでしたが、最近戻ってきました。なかなか力感溢れる彫像です。


 商人たちは同時に、商いの神である「えびす様」を信仰していたので、いつしか本覚寺はえびすさまの祀られている寺として、商人の信仰を集めるようになったのです。また日朝は「日朝様」としても信仰されており、特に眼病に御利益があると言われ昔から「日朝水」という目薬が境内で売られていました。

 本堂と分骨堂

 境内を入ると正面にご本堂がみえます。総欅造七間四面の本堂は大正8(1919)年の建造で、祖師像(日蓮像)を中心に釈迦如来と文殊、普賢の脇侍(南北朝期の作)などが安置されています。2017年に大規模な改修が終わり、新しく天井に龍が描かれたそうです(檀家でないとは入れません)。

 本堂の右手にあるのが、「日蓮分骨堂」です。こちらが「東身延」といわれる由縁のある大切なお堂です。

 木更津から持ち帰った梵鐘

 本堂の右手にある立派な鐘楼に下がってる梵鐘は、応永17(1410)年の銘がある銅鐘で、次のような話があります。
 初代の日出上人が房州に布教に行ったとき、上総の木更津の八幡宮で別当(神社を守る僧侶)との法論(宗教論争)を行いました。日出はその法論に勝ち、八幡宮寺の梵鐘をその証拠に持ち帰ることにしました。
 とはいうもののどうやって運ぼうか、思案していたところ、上人の従者の石渡新造左衛門が進み出て担いで鎌倉まで持ち帰ったそうです。
 大鐘をかつぐ話は弁慶にもありますから、そのたぐいのお話でしょうか、いかにも庶民が喜びそうなことです。

 正宗の墓

 本堂の左手、墓地の入口左手に、宝篋印塔が一基、立っています。この塔は刀鍛冶として有名な岡崎正宗の供養塔です。
 岡崎正宗は鎌倉末期に鎌倉の今小路で生まれ、刀鍛冶として知られています。鎌倉は幕府が開かれたこともあって、武士にとってもっとも大切な刀を生産する工房が多く作られたようで、その原料は稲村ヶ崎の海岸の砂鉄がつかわれていたようです。
 相模国は刀鍛冶のでた所として知られますが、正宗はその代表的な刀工で、粟田口吉光、長船長光とともに「三絶」といわれています。

 鎌倉扇ヶ谷にあった「正宗稲荷」のあたりがその屋敷跡と言われています。今でも扇ヶ谷には正宗の流れを汲む刀鍛冶山村さんがおられます。

 境内

 本覚寺境内は住民が生活道路として通行しています。鎌倉駅から来ると、まず裏門から入り、右手に日蓮分骨堂、左手に鐘楼を見て、本堂前に出ます。鎌倉時代の一般人の交通路は小町大路でしたから、本来は反対側、夷堂橋側から入るべきで、山門もそちらに付いています。

サルスベリ
2014/8/19
栴檀

 本覚寺の境内にはめずらしい栴檀せんだんの大木があります。春と秋では違う姿になります。

2023/12/2

こちらは晩秋の12月2日の栴檀の木。夷堂の屋根を背に、青空に栴檀の実が光ります。

十日戎

 10日はエビス様の縁日で、特に正月の初えびす、1月10日は「鎌倉えびす」としてここ本覚寺でひらかれます。当日は「夷堂」のエビス様にお参りし、縁起物の笹が配られ、御神酒も振る舞われて大変な賑わいになります。

十日戎 2019/1/10
十日戎 2019/1/10

お食事・休憩のおすすめ

 本覚寺の山門を出てすぐに夷堂橋(鎌倉十橋の一つ)があります。橋を渡ると妙本寺への道となります。おなかが減ってしまったら、妙本寺を訪ねる前に、橋を渡った先にある小さなソバや「ふくや」でおなかを満たすのがいいでしょう。橋を渡らず左手に向かい、小町大路を北上して散策を続ける場合は、しばらく行った左手にある喫茶・井川で一服したいものです。

夷堂橋の小さなソバや ふくや
ふくや

店内は5人ほどでいっぱいになるカウンター席。外で2~3人なら立ち食いもでる。ソバは山形産。山菜たっぷりのソバや肉ソバなどメニューは豊富。妙本寺お詣りの前か後で立ち寄りたい店です。

喫茶 井川

夷堂橋から小町大路を北に向かい、しばらく行くと左手に喫茶店・井川があります。鎌倉ではよく知られた、老舗の喫茶店。コーヒーの他に、チーズケーキなどもおいしいですよ。

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