西方寺(横浜・新羽)

 鎌倉・湘南の案内なのに、横浜のお寺? と思われるかも知れませんが、実は鎌倉と深い関係があるお寺なので紹介します。これからも、鎌倉だけでなく、横浜や川崎、東京にまで足を拡げていきます。皆さんも鎌倉めぐりだけでない、史跡や花を楽しんでください。

かつて鎌倉にあった西方寺

 西方寺さいほうじというのは、横浜市港北区新羽にっぱにある真言宗の寺院で、早春の蝋梅ろうばい、春の桜、秋の彼岸花で知られる「花の寺」です。
 鎌倉から離れているので、鎌倉案内本には取り上げられることはありませんが、実はこのお寺はもともと鎌倉にあったものです。
 鎌倉のどこにあったのでしょうか。気になるところですが、まずは現在の横浜の西方寺を訪ねましょう。

 西方寺さいほうじには横浜地下鉄ブルーライン、横浜から15分ほどの新羽にっぱ駅で下車します。改札を出て進行方向左に向かいます。振り返って新羽駅を見ると、地下鉄なのに地上駅。

西方寺入り口の大ケヤキ

 高架とクロスする道を左(西)にとってしばらくすると、右手に大きなケヤキが見えてきます。そこがもう西芳寺の入り口。訪ねたのは2025年1月でしたが、9月には参道の両脇に彼岸花が咲いているでしょう。桜の季節は左手に花が咲き誇っているでしょう。

参道

 2025年1月13日 西方寺入り口

 早春のお目当ては蝋梅ろうばいです。しばらく参道を進むと、山門の石段の登り口左手の駐車場で、早咲きの蝋梅が咲いており、たしかに香りをかんじることができました。

西方寺 山門下駐車場の蝋梅 2025年1月22日
乃木希典揮毫の日露戦争記念碑

山門

山門には真言宗補陀落山西方寺とあります。江戸時代末期の弘化年間(1844~1847)の建造で、本堂・鐘楼と共に横浜市文化財に指定されています。

西方寺の境内

本堂

2025年1月15日

 山門の向こう側に見えていたのが本堂。独特の形をした、真新しい茅葺きの屋根が輝いているように見えておもわず声が出そう。
 この本堂は今から約300年前の江戸時代、享保6年(1721年)に建造されたもので、平成15年(2003年)より解体修復が行われ、平成19年(2007年)に完成し、茅葺きの屋根も創建当初の姿に復元されました。江戸前期の建造物として横浜市文化財に指定されましたが、なんといってもその独特な造形に見とれてしまいます。

2025年1月15日

 西方寺本堂の本尊は阿弥陀如来座像で、座高85.5cm、寄木造り、平安末期の定朝じょうちょう様式を伝えている貴重な文化財。県重文に指定されている(拝観可能)。
 西方寺には他に、寺宝として注大般ちゅうだいはつ涅槃経巻十九という奈良時代の天平年間に書写された一切経の一部とされている国重文(非公開)が伝えられ、鎌倉にあった古刹であることがわかる。

客殿

観音堂

 本堂右手、石段を登ったところにあるのが観音堂で、秘仏とされる本尊は平安末期の様式を伝える木造十一面観音菩薩立像で、横浜市指定有形文化財とされています。
 ヒノキ材割矧ぎ造りで、像高106.3cm。西方寺がこの地に移ってくる前からここにあった観音院の本尊だった可能性があると言います。
 12年に一度の巳年の春に公開されるそうです。

鐘楼

 鐘楼は宝永5年(1708)の建造。何と、一撞き200円で誰でも撞けるとなっていて、大晦日には行列ができるそうです。

境内の風景

左から手水場、鐘楼、山門。山門脇のイチョウも立派です。
鐘楼脇から本堂を望む
観音堂の前から望む
本堂裏の庭 入れませんので本堂脇からのぞかせて戴きました
2025年1月22日
帰り、参道へ下る
桜の季節か彼岸花の季節にまた参詣しましょう

季節の花

蝋梅 1月末

 山門下の駐車場に二本、本堂の左に二本。1月13日に訪ねたときは、駐車場の蝋梅は満開のようでしたが、本堂脇の二本はまだ葉が多く、花はつぼみでした。

そこで、次の週の1月22日に再訪。本堂脇の蝋梅も見事に咲いていました。

山門下駐車場の蝋梅 1月22日
山門脇の花壇 ミツマタ 1月13日

 西方寺の解説板には、「当山西方寺は建久五年(1190年 源頼朝公在世の頃)鎌倉の笹目ヶ谷に創建され、開山は醍醐三宝院座主、奈良東大寺の別当の勝賢僧正でございます。のちに北条重時が忍性菩薩を招き鎌倉に極楽寺を創建するに当たり極楽寺の一山の中に移されました。極楽寺は、施薬院など医療施設をも含む広大な大伽藍でございましたが、戦禍や天災に遭いその多くを失い、時代も足利の時代になり縮小され、西方寺も当地新羽に移建されました。」とあります。
 また、「当地に移建されましたのは明応四年(1495)」つまり530年前のこととなっています。それでは、この地に来る前、鎌倉の西方寺は、どんな寺院だったのでしょう。その跡はあるのでしょうか、探ってみましょう。

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